HACCP関連
家庭でできる食中毒予防の6つのポイント
1996年は、学校給食が原因となった、過去に例を見ない規模の腸管出血性大腸菌
O-157による集団食中毒が多発しました。
1997年に入っても、家庭が原因と疑われる散発的な発生が続き、死亡した例も報告されています。
食中毒は家庭でも発生します。ただ、家庭での発生では症状が軽かったり、発症する人が1人や2人の事が多いことから風邪や寝冷えなどと思われがちで、食中毒とは気づかれずに重症になったり、死亡する例もあります。
あなたの食事作りをチェックしてみましょう!
食中毒予防のポイントは6つです。
ポイント1 食品の購入
ポイント2 家庭での保存
ポイント3 下準備
ポイント4 調理
ポイント5 食事
ポイント6 残った食品
ポイント1食品の購入
・肉、魚、野菜などの生鮮食品は新鮮な物を購入しましょう。
・表示のある食品は、消費期限などを確認し、購入しましょう。
・購入した食品は、肉汁、魚などの水分がもれないようにビニール袋などにそれぞれ分けて包み、持ち帰りましょう。
・特に、生鮮食品などのように冷蔵や冷凍などの温度管理の必要な食品の購入は、買い物の最後にし、購入したら寄り道をせず、まっすぐ持ち帰るようにしましょう。
ポイント2家庭での保存
・冷蔵や冷凍の必要な食品は、持ち帰ったら、すぐに冷蔵庫や冷凍庫に入れましょう。
・冷蔵庫や冷凍庫の詰めすぎに注意しましょう。めやすは、7割程度です。
・冷蔵庫は10C度以下、冷凍庫は、-15度C以下に維持する事がめやすです。
(細菌の多くは、10度Cでは増殖がゆっくりとなり、-15度Cでは増殖が停止しています。しかし、細菌が死ぬわけではありません。早めに使い切るようにしましょう。)
・肉や魚などは、ビニール袋や容器に入れ、冷蔵庫の中の他の食品に肉汁などがかからないようにしましょう。
・肉、魚、卵などを取り扱う時は、取り扱う前と後に必ず手を洗いましょう。せっけんを使い洗った後、流水で十分に洗い流すことが大切です。簡単な事ですが、細菌汚染を防ぐ良い方法です。
・商品を流し台の下に保存する場合は、水濡れなどに注意しましょう。また、直接床に置いたりしてはいけません。
ポイント3下準備
・生の肉や魚を切った後、洗わずにその包丁やまな板で、果物や野菜など生で食べる食品や調理の終わった食品を切ることはやめましょう。 洗ってから熱湯をかけた後使うことが大切です。包丁やまな板は、肉用、魚用、野菜用と別々にそろえて、使い分けるとさらに安全です。
・ラップしてある野菜やカット野菜も良く洗いましょう。
・冷凍食品など凍結している食品を調理台に放置したまま解凍するのはやめましょう。室温で解凍すると、食中毒菌が増える場合があります。解凍は冷蔵庫の中や電子レンジで行いましょう。また、水を使って解凍する場合には、機密性の容器に入れ、流水を使います。
・調理に使う分だけ解凍し、解凍が終わったらすぐ調理しましょう。解凍した食品をやっぱり使わないからと言って、冷凍や解凍を繰り返すのは危険です。冷凍や解凍を繰り返すと食中毒菌が増殖したりする場合もあります。
・包丁、食器、まな板、ふきん、たわし、スポンジなどは、使った後すぐに、洗剤と流水で良く洗いましょう。ふきんの汚れがひどい時には、清潔なものと交換しましょう。漂白剤に、一晩つけ込むと消毒効果があります。包丁、食器、まな板などは、洗った後、熱湯をかけたりすると消毒効果があります。たわしやスポンジは、煮沸すればなお確かです。
ポイント4調理
・調理を始める前にもう一度、台所を見渡してみましょう。下準備で台所が汚れていませんか?タオルやふきんは乾いて清潔なものと交換しましょう。そして、手を洗いましょう。
・加熱して調理をする食品は十分に加熱しましょう。加熱を十分に行うことで、もし、食中毒菌がいたとしても殺すことができます。めやすは、中心部の温度が75度Cで1分間以上加熱することです。
・料理を途中でやめてそのまま室温に放置すると、細菌が食品に付いたり、増えたりします。途中でやめるような時は、冷蔵庫に入れましょう。再び調理する時は、十分に加熱しましょう。
・電子レンジを使う場合は、電子レンジ用の容器、ふたを使い、料理時間に気をつけ、熱の伝わりにくい物は、時々かき混ぜることも必要です。
ポイント5食事
・食卓に付く前に手を洗いましょう。
・清潔な手で、清潔な器具を使い、清潔な食器に盛り付けましょう。
・温かくして食べる料理は常に温かく、冷やして食べる料理は常に冷たくしておきましょう。目安は、温かい料理は65度C以上、冷やして食べる料理は10度C以下です。
・調理前の食品や調理後の食品は、室温に長く放置してはいけません。
例えばO157は室温でも15~20分で2倍に増えます。
ポイント6残った食品
・残った食品を取り扱う前にも手を洗いましょう。残った食品はきれいな器具、皿を使って保存しましょう。
・残った食品は早く冷えるように浅い容器に小分けして保存しましょう。
・時間が経ち過ぎたら、思い切って捨てましょう。
・残った食品を温め直すときも十分に加熱しましょう。めやすは75度C以上です。味噌汁やスープなどは沸騰するまで加熱しましょう。
・ちょっとでも怪しいと思ったら、食べずに捨てましょう。口に入れるのはやめましょう。
この6つのポイントは米国農務省食品安全検査局が作成した
「Food Safety in Kitchen:a “HACCP” Approach」 を参考に、食品衛生に関する各分野の先生方により作成されたものです。
食中毒の三原則は、食中毒菌を「付けない、増やさない、殺す」です。
「6つのポイント」はこの三原則から成っています。
これらのポイントをきちんと行い、家庭から食中毒をなくしましょう。
食中毒は簡単な予防方法をきちんと守れば予防できます。
出来ることを取り入れて気にしていただければ幸いです。
家庭で行うHACCP
食中毒というと、レストランや旅館などの飲食店での食事が原因と思われがちですが、毎日食べている家庭の食事でも発生していますし、発生する危険がたくさん潜んでいます。
厚生省に報告のあった食中毒事件だけを見ても、家庭の食事が原因の食中毒が
全体の20%近くを占めています。
食中毒には、O157やサルモネラなどの細菌による細菌性食中毒、食品に洗剤などの物質が混入したりして発生する化学性食中毒、毒きのこや自家調理のふぐなどを食べた時に発生する自然毒性食中毒、などがあります。
とりわけ発生の多いのがO157の代表される細菌性の食中毒で、全食中毒のうち90%程度を細菌による食中毒が占めています。
細菌がもし、まな板に付いていたとしても、肉眼で見えません。しかし、目に見えなくとも簡単な方法をきちんと行えば細菌による食中毒を予防することができるのです。
宇宙食はどうやって作る?
ロケットに乗って長期間宇宙を旅する時、宇宙飛行士たちの食事はすべて地球で作ってロケットに積んでいきます。
狭いロケットの中で、しかも宇宙旅行中に食中毒になったら大変です。飛行士達の食事は絶対に安全でなければなりません。
そこで、NASA(アメリカ航空宇宙局)は、食品の安全性を確保するための方法を考え出しました。
これがHACCP(危害分析重要管理点)という方法です。
HACCPとは?
以前のブログでも触れましたように、HACCPとは危害分析(HA)・重要管理点(CCP)と呼ばれる衛生管理の手法です。
最終製品の検査によって安全性を保証しようとするのではなく、製造における重要な工程を連続的に管理する事によって、ひとつひとつの製品の安全性を保証しようとする衛生管理の手法です。
家庭の調理における「危害分析」(HA)とは、食品およびその調理過程に含まれる可能性のある食中毒原因と、その発生防止方法を分析することです。
食品と調理過程のどこで食中毒菌による汚染、増殖が起こるか、それを防ぐにはどういう手段があるかを考える事がこれにあたります。
例えばO157やサルモネラによる食中毒などは重大な害と言えます。このような害をどのようにしたら防げるかについて手順を明らかにし、調理の際、特に注意を払うべきポイント(正しい調理法)を「重要管理点」(CCP)と呼び、家庭では「6つのポイント」がこれにあたります。
さらに、HACCPでは、そのような正しい調理方法がきちんと守られているか常にチェックし、記録します。
家庭で行うHACCP
食品工場で行うHACCPは非常に事細かく危害分析し、重要管理点を定め、大変むずかしいものとなっていますが、それは、食品工場で作られる食品は長期間かつ広い範囲に流通するため、厳重な衛生管理と安全性が要求されるためで、家庭で作る料理でもその考え方の基本は同じであり、行わなければならないことです。
「きれい」と「清潔」は違います。きれいな台所が必ずしも清潔で衛生的な台所とは限りません。
見たところピカピカに光った真新しい台所。でも、食中毒菌はいないのでしょうか? いたとしたらそれは、「きれい」なだけの台所です。
それよりも、多少古くても、ちょっとした簡単な方法で食中毒菌がいなくなった台所、これが「清潔」な台所です。
きれいに見える食器や手指、ラップに包まれた食品なども必ずしも清潔ではなく、食中毒菌が居る場合もあります。外見だけで安心せず、衛生的な調理、取り扱いを心がけましょう。
食中毒の予防には「きれい」なことよりも「清潔」で「衛生的」なことが大切なのです。
食中毒は簡単で基本的な予防方法をきちんと守れば、防ぐことができます。
HACCPは最新の衛生管理の考え方ですが、家庭でも実行できます。
次回のブログでは、食中毒予防の家庭でできる「6つのポイント」を紹介致します。